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ンジンがかかって来たように思います。
開店三年目に後輩のN嬢と結婚。体格のいい、少々なら音声を上げると言葉も聞きとれるというお嬢さんで、何よりも理容のできるということで、本人の選んだフィアンセ。
一年近く交際をして結婚しました。そして一昨年女児誕生。やはり、耳への不安がありましたが、極めて健康な女児でホッと安堵。また、もう一人の孫が、あと一ヵ月ほどで生まれる予定です。私にとって、ますます多忙な生活になりそうです。
夏休みには、理容科の後輩を毎年のように招いて実習指導をしています。本人にいわせると、「先輩としてのつとめだ」と申しております。約二週間ほどを一緒に過ごすのですが、その折りおりの実習生や、わが子の言動を垣間見て、このような心の疼きを感じるのです。
心の教育、この情緒面のふくらみを、どのような視覚教材で育てるか、また、どのような体験で理解させるか、先生方とともに考えたい課題です。
わが子とのやりとりの中には、それぞれの年代において、お互いの理解不足による多くのすれ違いもありました。ほんとうに悲喜こもごも入り乱れた私にとって、まさに動乱の三十三年間でもありました。まだ当分、この動乱の中に身を置くことになりましょう。でも、これは煩わしいように見えますが、実は大変に楽しくもあり、私にとって発刺とした生き甲斐を与えている源泉でもあります。今、少しずつではありますが、私たちの希望を忘れなかった営みが、自らの力で芽吹き始め、たくましく伸び上がろうとしています。これは、私たちにとって努力したことへの報われた喜びであります。

 

 

 

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